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おばさん、ありがとう [グルメ2.0]

波立海岸にある弁天島。その島へ渡る橋の入り口に古い小さな食堂「波立食堂」がある。小さなその食堂は、なぜかなつかしい感じがして、自分の田舎や、祖母の家を思い出させる雰囲気があった。いくつかあるメニューを眺めたが、オフシーズンであるし、すべてのメニューが出来るのかちょっと心配になった。奥の調理場の小窓から顔を覗かせたおばさんに、私はメニューを指差して、「できますか」とたずねると「はい」とコクリとうなずいた。そこで、焼きハマグリ定食を頼みテーブルの席に着いた。テーブルの席からは砂浜の浜辺に波が押し寄せる景色が見る。「今日はあったかいね」、「そうですね、でも風は涼しいです」と一言交した。

しばらく景色を眺めながら待っていると、焼きハマグリ定食が出来上がってきた。おばさんは「ちっちゃいよ、ちっちゃいよ」とハマグリが小さいことを気にかけながらハマグリ定食をテーブルに置いた。

焼きハマグリわかめの味噌汁と漬物とご飯というシンプルな内容。焼きハマグリは小さいが味は濃厚、あっという間にすべてたいらげてしまった。すべて食べ終えて箸を置くと同時に、おばさんが現れ、「インスタントだけど飲むかい?」とコーヒーを置いていった。少しお洒落なコーヒーカップに入っていのは確かにインスタントコーヒー。傍らにはミルクとスティック砂糖2本が添えられていた。食後のコーヒーという都会的なサービスの、おばさんなりのおもてなし。

コーヒーを飲み終え帰り支度をしている、おばさんが来て、「これ、焼きおにぎり焼いたから、もっていって、おなかすいたら食べなさい」と、焼きたての半分ホイルに包まれた焼きおにぎりを私にくれた。「ありがとうございます。いただきます」とお礼をいい、お店を後にした。

家に着いた私は、焼きおにぎりを取り出してほおばった。焼きおにぎりは醤油のこげが香ばしかった。中に梅干が入ったその焼きおにぎりは、焼きハマグリの傍らで焼かれたであろう手作りの焼きおにぎり。とてもおいしかった。

この焼きおにぎりはメニューにはない。

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